ほとんどの人間が帰って明りが消された校内でシャワールームにだけは、小さくオレンジの光が灯り続けていた。
そのシャワーの湯が出しっ放しにされた一室。一人用の広さの個室なので二人は少し窮屈な状態で入っている。
その中で、両者は普段の様子とは異なる姿で存在していた。
大沢はいつもの陽気さが失せて無口であり、日高には反抗的な態度が無く、ただぼんやりと大沢の肩に額をもたれかからせている。
引っ切り無しに聞こえていた日高の嗚咽は止まり、代わりに大沢の肩先に熱っぽい吐息を伝えていた。
くたりと力無くもたれる日高の身体を大沢は左手で抱えるように支えながら、もう片方では日高の欲望をぎこちない仕草で慰めていた。
男との経験が無い大沢では、ただ単調に摩擦するしかできなかったが、それでも動かされる度に日高は鼻先を大沢の鎖骨に埋めて甘えるような吐声を漏らした。
日高はぼうっと思考停止した状態のまま、従順に大沢の手の動きによって与えられる快感に浸っていた。
洗ってやるつもりがなぜ下の処理までしているのだろうと、大沢に残った理性の部分では自問されていたが、今の日高の姿を見ている内に自分でも制御が利かなくなっていたのだった。
大沢の呼びかけに、快感に浸っていた日高の目が開かれた。
ぼぅっとしながらも自分の目線より少し上にある大沢の顔を見上げると、陽気さはすっかり消えてどこか苦しそうな顔をしている。
「俺も、いいか……?」
常のよく通る大沢の明るい声音は、今は低く掠れていて、日高には何の事を言われているのか理解できなかった。
しかし、大沢がしてくれる気持ちの良い行為が止められてしまったので、相手に合わせるように意味が分からないまま頷いていた。
日高の頷きを承諾と受けとった大沢は、自分の下の衣類を脱ぎ捨てる。
そして、中途半端なところで止められてもどかしそうに脚を震わせている日高を引き寄せた。
「ふぅ…んぅ…っ」
再び、気持ちの良い動きが始まった事に、日高の喉から満足そうな吐息が洩れる。
それに大沢の荒い呼吸も混ざり重なった。
同性との知識が無いため二人の立ち上がったものを一緒に擦る位しか大沢には思いつかなかったが、最初は遠慮がちだった動きは快感が引き出される事で徐々に激しく変わって行った。
プロローグ P1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
- 前の記事
- < 灰色の箱の中 7
- ホーム
- Home
- 次の記事
- 灰色の箱の中 9 >