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灰色の箱の中 9

 
  
 経験も少ない若い身には、性感の刺激が強すぎていた。
 
 緩く優しい快楽はうっとりと受け入れていた日高だったが、大人の男の強い欲望をぶつけられると及び腰になってしまう。

その逃げるように逸らされる日高の背を、大沢が追いかけて捕らえる。

未だ成長途中の若い身体に完成した大人の鍛えた体躯がぶつかって重なり、それぞれの肌が擦り合わされた。


「ひぃぃ… くう、ぅっ」

 強すぎる刺激に耐えられず、じりじりと日高は後退したが、すぐに狭いシャワー室の壁にぶつかった。

壁と大沢に挟まれる形で逃げ場が無くなって絶え間無い刺激に晒されると、日高の喉からは悲鳴のような声が鳴っていた。


 止まっていた涙がまた零れ出しても、大沢には止めてくれる気配がなかった。

代わりに目元に唇を寄せて、拭うように口付ける。乱れた息と共に、日高の頬や首筋に何度も口付けが降った。


 壁に日高を押し付けた事で動きやすくなった手は、濡れた肌の滑らかさをなぞるように身体に這わされていた。

タオルで洗っていた時の優しい動きとは違い、それは欲望の滲んだものに変わっている。


「ぅあっ、ひっ…やあ…ぁ!」

 小さな胸の引っかかりを手が探り当てて、日高の身体が反応すると何度もそこを弄られる。

痛いほどにしこった赤い実に大沢の執着が移ったようで、指で捏ねてつぶされ唇を当てられて、日高は散々に泣き声をあげていた。


 流しっ放しのシャワーの水音に、荒い息と両者の精液が絡む淫靡な音が解ける。

痙攣する日高の身体を大沢の腕が固く繋ぎ止めて、激しく剥き出しの肌が擦り合わせ続けた。



「一回、放して…出そうだから…」

 喋れるほどには思考停止から回復した日高が、上擦った声で大沢に告げる。

いつもの明るさが嘘のように無口で険しくなっていた大沢の顔が緩んで、微かに笑った。


「いいよ…このまま出して」

日高の要望は聞かれず、大沢は放してくれる気は無いようだったが、快楽に靄が掛かっている日高の頭は、(ああ、このままでいいのか…)と言われるまま素直に受け止めていた。


 仕方なく、そのまま大沢の身体にしがみついて、最後に向けての行為に没頭する。

頭も腰の位置も大沢の方が少し高いので、精一杯爪先立って背伸びをして相手の背中に腕を回す。

受動的だったのが、いつしか自分からもねだるように大沢の動きに合わせて腰が振られる。

もう恥じらいも躊躇する事もなく、シャワールームに泣くような喘ぎを響かせ、尖った乳首と自身の雄を夢中で大沢の身体に擦り合わせていた。
 

「っあ……ひぁ、あぁ…っ!」

切羽詰った悲鳴を上げて身体を痙攣させ、日高が限界を迎えた。

その身体を抱き止めながら、荒い息を吐いて大沢もその後に続く。


 密着していた身体を放すと、互いの放ったものがとろりと日高の褐色の締まった腹から垂れ落ちた。

その下、興奮の治まった性器と黒の繁みも白い迸りに塗れている。

やはり大沢の身体も同様な状態になっていた。

 
 はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、日高は壁にもたれて立っているのもやっとな状態だった。

疲労を滲ませながらも、絶頂に蕩けた顔と裸体の淫蕩な姿を自覚無く大沢の目に晒している。

その顔に大沢の影が被さって、静かに唇が触れ合った。
  


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