とある国の裕福な貴族の邸宅。
聡明な公爵様と美しい奥方様、そしてその御子息様が仲睦まじく幸せに暮らしていました。
けれども一家の幸福は長くは続かず、ある時、流行り病に罹った公爵様が年若くして帰らぬ人となってしまいます。
一家の名誉と財産、そして夫の忘れ形見である息子を守ろうと奥方様は奮闘しましたが、心労と無理がたたって数年で伴侶の後を追うように亡くなってしまったのでした。
たった一人残されたのは、まだ幼い御子息様です。
立派な家柄や財産があるといっても、まだ子供の身。一人で生き抜く事などできるわけがありませんでした。
そこに声をかけたのが、公爵様の親族レイモンド――後に彼を引き取って、義父となる男でした。
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