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月の眠る夜 3

  
  
 月明かりを頼りに、小さな釦を外していく。

暗い室内では主人が着ている絹の夜着の色は分からなかったが、俺の記憶では確か薄い青色をしていたように思う。

 手元の暗さに戸惑いながらも全ての釦を外して上衣を開けると、薄青い闇に男の白肌がぼうっと浮かび上がった。

アウトドアの趣味も無く室内での勤務時間の長い男は、あまり日に焼けておらず白い肌をしている。

それでも生白く貧相に見えないのは、男が運動不足の解消の為に暇を見つけてはジムに通っていて、その身体をしなやかな筋肉に覆われたしっかりしたものにしているからだろうか。


 しばらく俺はぼんやりと男の素肌を眺めていたが、やがて薄青い闇に浮かび上がる白に誘われるように指が伸びていた。
 
そっと滑らかな胸の稜線に手の平で触れてなぞる。

男の肌の表面はひんやりと冷えていて、湯上りの後の滑らかな柔らかい質感になっていた。

左胸に唇で触れる。 そこから伝わる心音は、緊張する俺のものと比べて、静かな安定した鼓動が刻まれていた。


 安らかな寝顔を見ながら、胸の小さな突起にも触れた。

逞しく筋肉が付いた胸の上のそれは、アンバランスな程小さく可憐な作りに見える。


「んっ、…く…っ」

 俺は男の穏やかな表情から反応を引き出したくなって、少し乱暴に捻り上げた。

呼吸を詰まらせた表情を上目使いに見ながら、今度は舌で舐め上げる。

小さくとも健気に立ち上がる胸の突起を舌で転がし、歯の痕が付かない程度に甘噛みを繰り返した。


 そうやって、胸に触れていると男の呼吸と鼓動の乱れが伝わってくる。

今この部屋は暗く色が着いていない世界になっていたが、執拗に弄った胸の実は赤く膨れあがっているに違いなかった。

唾液に濡れて光るその部分に唇で小さく音を立てながらしつこく吸い付き、掌は脇から締まった腹筋を撫で這わせた。


 静かにしなければと思うのだが、俺の喉は興奮を抑え切れずにはあはあと荒い息を洩らして、夜の部屋の静寂を乱してしまっていた。

俺は主人の形の良い耳朶を噛んで荒れた息を殺しながら、片手を下肢に伸ばしていった。


 自分でも汗ばんでいるのが分かる手を、ゆっくりと男の下衣の中へくぐらせる。

潜ませた指先に秘丘の硬い毛先が届くと、さわさわとした感触を掻き回して弄んだ。

 鍛えられて逞しい体格の割に、男の身体の体毛は薄めだった。

股間に透ける程度に生えているのと脇にもほとんど無く、身体には産毛が少しある程度で長い手足はつるりと滑らかな感触だった。

その色は完全な黒色ではなく少し茶がかかっている。髪や瞳、肌も白く、生まれつき色素が淡いようで、それが背が高く体格の良い男の身体を繊細そうな作りに見せていた。


 じわじわと指を進めていくと、その奥は既に濡れた感触になっていた。

手が下着の中に深く侵入して弱い箇所を探り続けると、男の息は他愛も無く乱れて中心部から濡れた音が響くようになる。

俺に少し触れられただけで、主人である男が容易に快楽の反応を示す事に嫌な笑いが口元に洩れてしまう。


 あまり下着を汚してしまうのも後々面倒なので、男の脚から絹の下衣と一緒に脱がし取った。

男の肩にだらりとかかっている上着も、汗で汚れそうなのでこちらも脱がせてしまう。

眠りに重くなっている男の身体を持ち上げて着衣を脱がせていくのは力が要って、少々骨の折れる作業だった。

 不自然な皺ができないようにそれらを纏めて、ベッドサイドに置いておく。



 今や主人の身体は一糸も纏わず、俺の目前で無防備に横たわっている。

男の意識が無いのをいい事に、その仰向けの身体を俺の好きなように組み伏せた。

手首は痕が付かないよう持ってきたタオルで柔らかく縛って、男の頭上に配置する。

両の脚は深く屈曲させて、横に大きく開いて寝かせた。


 かくして哀れな俺の主人は、腕を頭上に留められて大股を開き、股間を剥き出しにした酷い格好を晒す事となった。

しかも、本人は深い眠りの中にありながら、その中心を俺に嬲られた事で恥じらいも無く勃起させているのだから――


 密かに喉の奥が笑いの発作に震えた。

――今日はどれほど酷く虐めてやろうかと、暗い思いが胸に広がる。

普段は冷たく冴えた美丈夫の卑猥な様相を見下ろすと、いつも俺は嗤い出したくなるのだ。

こいつが使用人の俺に辱められている事を知りもしないのだと思うと、それは尚更だった。




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