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灰被り 2

  
             
「お前のようなのが入ると俺の部屋が汚れる。まずはその汚れを何とかしろ」

「……はい」

 贅沢三昧で家の財産を食い潰す義父と長男の部屋と比べると、次男のルークの部屋はまだ簡素なものでした。

それでもルークが買い集めた本などが多くあって、それを汚されるのを嫌がってのことでしょうか。 部屋に入る時は決まって身体を洗うように命じられるのでした。


 ジルはルークの部屋のバスを借りて身体を洗い流すと、渡された着替えに袖を通します。

それは飾り気の無いローブでしたが絹でできていて、ジルがいつも着ている襤褸服より数段に上等なものでした。

ルークの衣服を借りているとあって少し大きめでしたが、腰の紐で調整すればジルにも着られる寸法です。


 身を綺麗にしてから、ジルは部屋を掃除したりベッドシーツを取り替える作業を始めました。

しかし、それほど散らかっていない部屋なので、いつもこの仕事はすぐに終わってしまうのです。

ジルを無視して傍らで本を読んでいるルークに、おずおずと仕事が終わった事を伝えます。

そこで初めて存在に気付いたかのように、ルークは本を置いてジルに向き直りました。


 ルークはものも言わずに歩み寄ると、荒々しくジルのローブを引き剥いでしまいます。

びくりと身を震わせたジルでしたが、ルークに抵抗するようなことはありませんでした。

部屋の掃除で呼びつけるのは口実で、それはほとんど習慣のように繰り返されていたことだったのです。

 何がきっかけだったのか分かりませんが、公爵様の高貴な瞳、奥方様の美しい容貌をジルは受け継いでいましたので、それがルークの興味を引いたのかもしれません。


 整えたばかりの新しい紺の寝具の上に、ジルは軽々と投げ出されていました。

何も付けていない素肌は、つい先程まで纏わりついていた汚れを落としたので元の純白を取り戻し、紺色のシーツの中で浮かび上がるように見えました。

埃を被っていた髪も輝きを取り戻し、金の王冠のようにジルの顔の周りに広がっています。

それは以前は綺麗に切り揃えられていましたが、今は手入れをする余裕もなく伸びっ放しでしたので、真っ直ぐの髪が内側に丸まって肩先に届く長さになっていました。

 鼠色の襤褸服を着ているより、何も付けていないジルの姿はずっと高貴で美しく栄えるのでした。
 
 

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